犬のメスにおこなう避妊手術は、オスに行う去勢手術より術式が複雑なため、オスより費用が高くなります。
避妊手術の費用は、全国の動物病院で統一されているわけではありません。
そのため小型犬だと、だいたい35,000〜60,000円前後と料金設定に幅があります。
また、腹腔内の手術になるため、手術後は基本的に1泊入院。
開腹が必要な避妊手術となると、退院してからの過ごし方も不安の1つです。
この記事では、病院で聞き忘れがちな手術後に気を付けるべきことや、費用を抑えるポイントも紹介。
避妊手術の犬にとってのメリットデメリットだけではなく、抜糸まで安心して過ごせるよう、手術後の抱っこの仕方なども解説しています。
犬の避妊手術は費用が5万円前後かかる!補助金が出る自治体も
小型犬の避妊手術費用は、だいたい35,000~60,000円前後が平均的です。
さらに大型犬になると、使用する薬の量も増え、料金も増加に。
退院前までには、正確な手術費用を確認しておきましょう。
この費用に、術前の血液検査代や薬代などを含んでいるかいないかは、動物病院によってまちまちです。
ですが、多くの獣医師が犬の避妊手術を推奨しているため、手術を受けやすいよう通常の手術より良心的な費用設定されている傾向がありますよ。
もし、お住いの自治体が助成金制度のある地域なら、さらに避妊手術の費用を抑えられる可能性があります!
補助金が出る自治体は5千〜1万円程度の補助金が
自治体により条件は異なりますが、犬の避妊手術を受ける際には補助金を受け取れる可能性があります。
5千円~1万円程度助成金が出る自治体もあり、結構大きいですよね。
ちなみに私の住む地域は結構田舎のため、主要都市でしか助成金の支給は実施されておりませんでした。
しかも地域猫を優先…
地域によっては応募期間が2ヶ月程度と短かく、さらに抽選結果の通知まで1ヶ月以上かかかる地域も。
手術をすると決めたら早めに情報収集を行いましょう。
ちなみに動物病院ではあまりお知らせしていません。
応募される方はみなさん、市役所でたまたまポスターを見かけたと話されていますから、手術予約前にはぜひ1度、お住い地域の自治体情報を調べてみて下さいね。
ペット保険は使えません!病気による避妊手術なら適用可能
ペット保険はケガや病気に適用されるもので、予防などの費用には適用されません。
健康な犬に行う避妊手術は、ペット保険が適用になりませんので注意しましょう。
病気により子宮や卵巣を摘出する場合は保険の対象になります。
腹腔鏡手術の費用は3万円前後!傷跡が小さくなる
腹腔鏡手術という言葉を聞いたことはありますか?
特殊な手術機器を使用することで、手術による傷口を1cm程度の小さなもの、2カ所程度で済ませることが可能です。
通常の避妊手術でも、小型犬で3cm程度の傷口で、手術後に毛が生えれば探さないと見つからないほど目立ちません。
ですが、腹腔鏡を使用した手術では、傷口が小さくなる以外に痛みが少ない、回復が早いなどのメリットもありますよ。
専門性のある技術や高価な機器の導入が必要なため、通常の避妊手術より2万~3万5千円程度費用にプラスされます。
まだまだ一部の動物病院でしか導入されておりませんので、希望する場合は事前に動物病院へ問い合わせましょう。
犬の避妊手術の時期は生後半年頃がベスト!病気のリスクを軽減
犬の避妊手術の適切な時期は生後半年頃ですが、過ぎたからといって手術ができなくなるわけではありません。
術前検査で異常がなければ、何歳であっても手術自体はほぼ可能です。
避妊手術が推奨される生後半年は、ちょうど、身体がある程度しっかり成長して、1回目の発情(生理)がおこる時期。
犬は発情を経験する回数が増えるごとに乳腺腫瘍のリスクが上がるため、生後半年を迎えたらできるだけ早い時期に避妊手術を予約しましょう。
発情回数 | 初回発情前 | 1回発情後 | 2回以上発情後 |
発症率 | 0.05% | 8% | 26% |
1回目の発情前ではほぼ乳腺腫瘍のリスクを回避することができますが、2回以上経験してしまうと、3~4頭に1頭という割合で発生してしまいます。
3回目の発情を迎えてしまうと避妊手術をしていない犬と発生率は変わりません。
乳腺腫瘍が予防できなくても子宮の病気は予防できる
ご家族で、愛犬に子犬を生ませるか悩んでいる間に、適切な時期を過ぎてしまうこともあるでしょう。
また、発情が来る前に手術をおこなおうとしたが、手術直前に発情が来てしまった、ということもあります。
ですが、愛犬が発情を経験し乳腺腫瘍のリスクが上がってしまってからでも、子宮の病気は避妊手術で防ぐことが可能ですよ。
避妊手術をおこなっていないシニア期以降のメス犬ではしばしば、子宮蓄膿症という病気を発症することがあります。
子宮蓄膿症は、免疫低下などなんらかの原因によって子宮内にばい菌が入り膿が溜まる病気で、放置すると子宮が破裂し、短時間で死亡することもある危険な病気の1つ。
何歳であっても避妊手術をおこなって予防することは十分に有意義です。
犬の避妊手術のメリットは病気の予防やストレスフリー♪
現在いたって健康なのに、わざわざ麻酔をかけて愛犬の身体に傷を入れ、避妊手術をおこなうのはかわいそうな気がしますよね。
犬の避妊手術は健康面で大きなメリットがありますが、その半面デメリットもゼロではありません。
よく理解した上で、愛犬にとって良い選択ができるよう、メリットとデメリットをまとめました。
一度避妊手術をおこなうと、二度と元の状態には戻せませんのでご家族でよく相談して決めましょう。
1つずつ詳しく解説していきますので、まずはメリットから確認していきましょう。
大きなメリット!病気の予防とストレスからの解放で長生き効果♪
避妊手術によりメス犬特有の病気を防ぐことができ、発情のストレスも大きく軽減できます。
これらにより、愛犬の長生きにはもちろん良い影響が。
また予期せぬ妊娠も防げることから、多くの獣医師が避妊手術を推奨しています。
乳腺腫瘍と子宮蓄膿症の予防
乳腺腫瘍ができてしまった時は、良性であればほとんど問題ありません。
これが悪性であった場合、つまり癌の場合は転移の可能性があります。
また子宮蓄膿症も、発見が遅れると命を落としかねない危険な病気。
避妊手術はそういった病気を予防することで、長生きにつながります。
発情のストレスがなくなる
発情中は神経質になり、落ち着きがなくなり、陰部を気にしてしきりに舐めることもあります。
その影響で食欲が落ちてしまうことも。
発情のたびに、それなりのストレスがかかっています。
さらに犬の発情は一生涯続きますから、繁殖の予定がないのであれば、取り除いてあげてもよいストレスかも知れません。
予期せぬ妊娠を防ぐ
今では室内飼いが多く、外飼いしていて知らない間に妊娠していた、ということは滅多に起こらなくなりました。
ですが発情中のメス犬が近くにいると、未去勢のオス犬はホルモンの臭いを嗅ぎつけ興奮したり、オス犬同士でのケンカなどトラブルが起こりやすくなります。
動物病院やトリミング、ドッグカフェに連れて行くと周りの犬に迷惑をかけてしまうことがあるため、外出時には注意しなければなりません。
トラブル防止のメリットからも避妊手術は推奨されています。
デメリットは費用や麻酔のリスク!太りやすくなるなど
デメリットに麻酔のリスクがありますが、ここで麻酔を避けても、避妊手術をせずに病気になってしまった場合には、有無を言わさず手術になることがほとんど。
その他、太りやすくなるといったデメリットもフードの与え方を工夫することで対処できます。
それでも避妊手術を行うかどうか、悩ましいところですね。
将来必ず病気になると決まったわけでもないし…
ちなみにヨーロッパでは、犬の避妊手術はほとんど行われていません。
逆にアメリカでは積極的に行われていて、ここは倫理観や国民性などの違いですね。
日本ではどちらの意見も尊重されておりますが、繁殖予定のない犬はほとんど避妊手術を行う傾向にあり、合理的な考え方といったところでしょうか。
このような傾向があったとしても、決めるのは飼い主さん、あなたです。
デメリットについて解説していきますので1つずつ確認していきましょう。
手術費用がかかる
手術になりますから、それなりの費用がかかります。
動物病院によって費用に幅があり、この料金に血液検査・入院費・内服薬・抜糸などすべてを含んだセット料金という病院もあれば、あくまで手術の手技代のみというところも。
電話で問い合わせるとほとんどの動物病院が料金を教えてくれますから、信頼できる動物病院の中から比較的安いところを選んでも良いでしょう。
自治体の助成金制度も、ぜひ検討してみて下さいね。
太りやすくなる
臓器を手術で摘出しますから、その分の代謝が落ち、消費カロリーが減って太りやすくなります。
いつもの食事から2割程度減らさなければ、体重は増えてしまいますが、発情によるストレスから解放され、食欲は増える傾向に。
減らすと物足りないという犬には、避妊去勢後用のごはんを与えると、量を減らさずにカロリーを抑えて体重管理ができるため、おすすめです。
体重はごはんでコントロールできますが、病気の発症はコントロールできません。
まれに尿失禁が起こる
手術後数年経過してから、ホルモンの影響で尿失禁が起こることがあります。
大型犬に多い傾向にあり、発生率もごくまれですが、ゼロではありません。
就寝中などのリラックスした時間に起こります。
治療薬の副作用や生活スタイルを考慮して治療方針を決めるため、主治医とよく相談しましょう。
麻酔のリスクはゼロではない
避妊手術には、当然のことながら全身麻酔が必須となります。
1万頭に1頭の割合で、麻酔薬に異常な反応を示す特異体質の犬がおり、これは術前検査でも発見できません。
手術中は麻酔による事故を防ぐため、緊急対応に熟知したスタッフと術者で行い、人工呼吸器や心電図のモニターなどを活用、緊急薬をいつでも使用できるように準備をして、万全の体制を整えます。
ですが人間の全身麻酔でも同じで、この世に「100%安全です」、と言い切れる全身麻酔は存在しません。
動物病院では、手術前後も管理を怠らずにモニターすることでリスクを最小限に抑えています。
繁殖ができなくなる
当然のことながら、避妊手術をおこなってしまうと、二度と子犬を生ませることはできません。
手術後にやっぱり繁殖させたいと思ってもできませんので、ご家族でもよく話し合って愛犬の飼い方、方針を決めましょう。
避妊手術を行わないなら覚悟と病気への注意が大切
もし繁殖を考えるなら、犬が育児放棄することもあるということを知っておきましょう。
万が一犬が育児放棄をした場合は、夜中も3~4時間ごとにミルクを子犬全員に与えたり、排泄を促したりなどのお世話と覚悟が必要になります。
発情中は室内を汚すことがあるため、おむつも必要になるでしょう。
また、避妊手術をおこなわない場合は、犬には更年期がないため、発情が一生涯続きます。
リスクのある子宮蓄膿症は、発情の終わりころに発症するため、その時期はよく気にかけてあげましょう。
いつもより長い発情や陰部から膿が出ている、飲水量が増えるなど様子が違うときは注意が必要です。
犬は避妊手術後に性格が変わる!?おとなしい
発情がおこると犬は神経質になるため、気が立っているように見えることもあります。
そういった姿が落ち着くことで、避妊手術後は性格がおとなしくなる、といわれることがありますが、根本的な犬の性格は変わりません。
変わるのは、あくまで発情によって引き起こされていた行動部分の変化です。
その子本来の性格は変わりませんので、攻撃性の強い性格の犬が避妊手術後におとなしくなるのでは?という期待は、あまりできません。
麻酔をかけるとしばらくはぼーっとしますので、避妊手術後は少し犬がおとなしくなったように見えますが数日でもとの様子に戻るでしょう。
犬の避妊手術後の安静期間は?抜糸までの過ごし方
犬の避妊手術後は、約1週間後の抜糸まで、激しい運動やシャンプーは避けて安静に過ごしましょう。
獣医師により指示された抜糸の日までが安静期間になります。
動物病院により数日前後しますが、避妊手術後からだいたい1週間前後に抜糸の指示が出るでしょう。
犬のお散歩や抱っこの仕方など、家での安静期間の過ごし方や避妊手術後の状態などを解説していきます。
当日はおとなしくしていることが多いですが、犬は痛みに強く、数日で普段の生活と変わらない様子で過ごします。
ですが、安静期間中はまだ傷口が塞がっておりませんので注意して過ごしましょう。
当日は寝てばかり!お水はまだあげないで
手術当日の夕方頃には、シャッキリしてきますので、面会に行くなら夕方以降が良いでしょう。
実際には、犬の本能と気合でシャッキリしているように見えるだけですので、まだ少し頭がボーッとしています。
避妊手術は基本的に一泊ですが、入院させるとケージから出してほしくて騒ぐ場合、自宅で安静にしていられる場合は当日に退院できることも。
当日退院の場合、安心できる自宅では、手術翌日まで寝てばかりかも知れません。
退院できた嬉しさから元気に見えても、まだ少しボーっとしており、誤嚥の可能性もあるため、手術当日の飲水は控えて下さい。
点滴でしっかり水分補給されていますので、お水は手術の翌日からで大丈夫ですよ。
手術後の痛みはいつまで?犬は痛みに強く2〜3日で回復!?
普通は開腹手術をしたら、人間なら1週間は入院、数週間は自宅安静になります。
ですが犬は痛みに強く、翌日〜3日後くらいにはお散歩など、いつもと変わらぬ生活を送れることがほとんど。
柴犬など痛みに弱い子は、大げさに痛がったり、5日ほどしょんぼりすることもあります。
帰ってきてからおしっこをしません…
といった心配の電話が、退院後にかかってくることもよくあります。
手術当日から翌日は、腹部の痛みにより踏ん張れないこともありますが、大抵は手術翌日の午後にはできていますよ。
心配であれば痛み止めを処方してもらえることもありますので、動物病院に相談してみましょう。
抜糸までにお散歩もok!?お留守番は退院翌日から
退院当日はお散歩を控えましょう。
どうしても外でないと排泄ができない場合は、排泄が終わったらすぐに帰宅します。
犬は痛みに強いため、二日目から普段と変わらぬ様子で生活していますが、傷口は塞がっておりませんので、長時間のお散歩や激しい運動は避けましょう。
お留守番は2日後からさせても構いませんが、暇になると傷口を舐めてしまう犬がいます。
ちなみに傷口は3日程でほとんどくっついているそうで、舐めても傷口が開いてしまうことはないようですが、細菌感染や縫っている糸を歯で引っ張ると良くありません。
心配な時はエリザベスカラーなどを活用しましょう。
お洋服タイプもありますので、詳しくはこちらで解説しています。
抱っこの仕方はお胸を持ち上げてお尻を支える
お腹に傷があると思うと、抱き上げるのも少し気を使いますよね。
腹部を避けてお胸の下に手を入れ、反対の手でお尻を支えるように持ち上げると、安定します。
とはいえ、本人が嫌がる場合は、不必要な抱っこは控えましょう。
3日〜1週間程度で痛みもほぼなくなり、受け入れるようになります。
あまりに嫌がる場合は、傷口の腫れなどがないか、診てもらっても良いでしょう。
まとめ
- 小型犬の避妊手術は35,000〜60,000円程度
- 自治体によっては補助金などを利用して、費用を抑えることもできる
- 別途検査代や薬代などの費用がかかる動物病院もある
- 犬の避妊手術は生後半年頃が適正で、様々な病気を予防するメリットがある
- 費用がかかる、太りやすくなる、麻酔のリスクなどデメリットもある
- 避妊手術をしても、犬の根本的な性格は変わらない
- 犬は痛みに強いため、術後2〜3日で普段の様子と変わらない生活ができる
犬の避妊手術は、愛犬にとって初めての麻酔になることが多く、不安がつきものですね。
手術当日までに心配なことがあれば、ぜひ主治医になんでも相談して、できる限り不安は取り除きましょう。
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