シニア期の7歳頃から、おもちゃで元気にはしゃいで遊びまわる姿はうんと減り、寝てばかりいる時間が目立ち、さらに寝たきりの老犬になると、気になるのが床ずれですね。
床ずれは、長時間同じ姿勢でいたために、皮膚が圧迫されて血流が滞り、皮膚の一部が壊死して起こると言われています。
つまり、皮膚の血行不良を上手に取り除いてあげることができれば、長時間同じ姿勢で寝ていても、床ずれは予防することができます。
同じ姿勢でないと落ち着かない子や、体位変換を頻繁にできない子の床ずれが予防できれば、老犬も飼い主も、もっと楽に介護と付き合えますね。
老犬は、傷の治りに時間がかかるため、一度床ずれができてしまうとなかなか治りません。
床ずれを作らないための予防が重要になってきます。
この記事では、老犬の状態に合わせた介護グッズとマット選びのポイントを解説。
長時間同じ体勢で寝かせてあげるための重要なポイントも解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
老犬の床ずれ予防はグッズ利用と無理のない体位変換で
老犬の床ずれはなかなか治りにくいため、作らないように予防をすることがなにより重要です。
適切な予防を怠ると、床ずれは骨が見えてしまうほどに悪化することがあるため、できてしまったあとの対応も重要です。
寝たきりになった老犬の床ずれを予防するためには、一般的に2時間に1回の体位変換が必要と言われています。
ですが、飼い主さんの生活も考えると、とても現実的な頻度ではありません。
この体位変換の頻度は、老犬の状態に合った介護用品を選び、正しく使うことで減らすことができます。
また、床ずれは作らないことが理想とは言いましたが、絶対に作らないというのは極めて高い目標になってしまいます。
床ずれを完璧に防ぐことはかなり難しい
そもそも床ずれは、長い介護生活のなかでは完全に防ぎきることは難しく、老犬介護に慣れた人が適切にケアしていてもできてしまいます。
床ずれを完璧に防ごうとすると、飼い主にも大きなストレスがかかり、老犬介護がどんどん苦痛になってしまいます。
まずは、できてしまった床ずれをこれ以上悪化させないために、傷を保護するものを巻き、圧迫の原因となってしまったものを取り除くなどの適切な対応を行いましょう。
できてしまった床ずれは、適切に処置してあげればよいのです。
ネットで調べても、床ずれへの処置方法が出てきますが、慣れていない人にはややイメージしにくい部分もあります。
一度獣医師に床ずれの状態を確認してもらい、実際にアドバイスを受けると、今後も的確に対処しやすくなるでしょう。
もがく子は無理をしないで楽な体勢と保護グッズで
もがく子は、無理に好きではない姿勢へ体位変換を行う必要はありません。
床ずれを予防しようと無理に体位変換をしていると、もがいて皮膚が擦れ、かえって床ずれのきっかけを作ってしまいます。
擦れる部分には床ずれ防止対策のグッズを巻いて皮膚を保護したり、圧迫の少ないマットを使ったりすればよいのです。
また、もがいてしまう子で、寝たきりになる前に旋回する徘徊行動が見られていた場合は、旋回していた側を下にして寝かせると落ち着くきやすくなります。
この対策で睡眠の質が上がり、夜鳴きを減らすことにもつながります。
体勢を変えてみても落ち着かない場合には、耳や脳の疾患を抱え、本人は目が回っている感覚になっていることも、老犬ではしばしばあります。
心配な時には動物病院を受診しましょう。
床ずれ対策グッズは信頼のできるメーカーのものを!
本人の好きな体勢を優先していると、どうしても同じ分部の皮膚が圧迫されがちになり、このままでは床ずれが心配になります。
近年では品質の良い、さまざまなタイプの介護マットやグッズが、ペットメーカーから販売されるようになりました。
信頼できるメーカーのもので、愛犬の状態に合ったグッズを使用することで床ずれのリスクを抑えられ、介護の大変さを軽減してくれます。
今回おすすめするグッズは、床ずれ防止サポーターと介護マットの2アイテムです。
最初に紹介したいのは、こちらのサポーター。
老犬の床ずれ用サポーターは手足関節の擦れに
もがいたり、よく動こうとしたりする老犬では、手首やかかとの皮膚が擦れ、床ずれの原因となります。
床ずれ予防サポーターは、擦れやすい部分を保護でき、皮膚が擦れないよう予防してあげることが可能。
手首や足首に巻いて使用するこちらのサポーターは、長年ペット用品の開発に携わってきたペティオが販売しています。
巻いた足にかかる擦れや圧迫の負担を軽減でき、床ずれのリスクから皮膚を守ります。
このサポーターの布部分には伸縮性があり、二股に分かれたベルトが関節に合わせてやさしくフィットします。
よく立とうとしたり、動こうとしたりする老犬では、ズレてきてしまうという口コミもあります。
あまり動こうとしない子や、同じ体勢を好む老犬ではきちんと巻けばズレなかったという評価が多く、擦れ防止として安心して使えるでしょう。
老犬の床ずれにはマット選びが重要
床ずれは老犬など寝たきりの状態で、同じ分部の皮膚が長時間圧迫され、血流が滞ることで壊死し起こります。
そのため、関節だけでなく体圧が集まりやすいところにできるので、全身の体圧が分散できる介護マットが予防・改善に欠かせません。
例えば、老犬で床ずれができやすいのは、こういった場所。
- 頬
- 耳
- 肩
- 肘
- 足先
- 腰など
マットにはいくつか種類があり、高かったから良いというわけでも決してありません。
誤ったマット選びや使い方をすると、マットの効果が発揮できないどころか、むしろ床ずれができやすくなってしまうことも。
介護マットの良さを最大限に活かし、老犬の床ずれを防止できるよう、正しいマットの選び方と使い方を確認していきましょう。
マットの種類は3種類を使い分ける
マットと一言で言っても、期待する効果・厚み・値段・老犬の状態に合わせて、最適なマットの種類は異なり、大きく3種類の介護マットに分けられます。
そのため、口コミだけをあてにして選ぶと、期待していた効果が得られなくなってしまいます。
合っていないマットを使用すると、マット本来の良さが、愛犬にはデメリットとなってしまうこともあるのです。
これから解説するマットの特徴を参考にぴったりのマットを探していきましょう。
マットの購入時期は、寝ている時間が増えたと感じた頃で良く、デメリットもないため若い頃から使用しても問題ありません。
3種類のマットの特徴とメリット・デメリット、動物病院でもよく使用されているおすすめマットを紹介します。
高反発マットは起き上がりや寝返りをサポート
寝たきりではないが、寝る時間が増えてきた時期におすすめです。
高反発のため、沈み込みが深すぎず、寝返りや起き上がりの負担を和らげます。
耐久性も高くヘタリ感も少ないマットです。
こちらのマットは汚れても水洗いが可能な上に、数時間で乾くと好評を得ています。
さらに洗い替えのカバーが付いているため、汚れても落ち着いて対処できるのが嬉しいポイント。
カバーは滑りにくく、愛犬が気に入って使っているという口コミも多く見られます。
すでに床ずれができている場合や寝たきり状態の子には、特性上、床ずれを悪化させる可能性があるため、高反発タイプはおすすめできません。
後述する低反発タイプやジェルタイプを検討しましょう。
低反発マットは寝たきりの子に最高の寝心地を追求
完全に寝たきりの状態でも使用でき、すでに床ずれができてしまっている場合でも使用可能。
体を動かせる子には、足が沈み少し動きにくく感じます。
少々高いのですが、こちらの低反発マットは大学の動物病院でも使用されるほど信頼できる、高品質の体圧分散マットです。
痩せていても安心の低反発ウレタンがじんわりと身体を支え、皮膚の圧迫を和らげます。
マットの底側には高反発のマットが沈み過ぎを防ぎ身体を支えます。
寝たきりの子の熟睡を目指し追求した高品質のマットレス。
ジェルマットはできてしまった床ずれも改善傾向へ
お持ちのマットの上に敷いて使用します。
ジェルが身体を包み込むように変形するため、踏ん張りも効きやすく、動くときのストレスも軽減してくれます。
こちらのマットに使われているエクスジェルとは、人間の車椅子に使われているものと同じ素材、身体の動きに合わせて柔軟に変形します。
皮膚と一緒に前後左右に動きますから、床ずれの大敵である皮膚が擦れる刺激を大幅に軽減できます。
人間の医療現場でも採用される国際基準の高品質素材でとても高価です。
なかなか気軽には購入できません。
小さいサイズのものを購入して、どうしても床ずれの管理がうまくいかない場所にだけ使用しても良いでしょう。
横になるときに自分の身体の重さを支えきれず、ドスンと倒れるようになったらぜひ検討していただきたい唯一無二の1枚です。
グミのような弾力がウレタンの10倍、衝撃を和らげ、できてしまった床ずれも治りを早めます。
老犬の床ずれ対策で大事な圧抜きと底つき
ここでは、老犬の床ずれ対策に重要な正しいマットの使い方について解説します。
ここまでは、正しいマットの【選び方】についてでしたが、ここからは正しいマットの【使い方】です。
どんなに良い適切なマットを使っていても、使い方が間違っていたり、対策が不十分だったりすると、床ずれができてしまいます。
老犬が床ずれを防ぐために最も重要なポイントは次の3つ。
- 圧抜きをする
- 底つき感はないか
- マットの上に敷くものはシンプルに
この対策のポイントは実はとても簡単です。
ポイントを理解することで、老犬が同じ姿勢を好んで長時間、寝てしまっても気持ちがとても楽になりますよ。
圧抜きであの子の好きな姿勢をずっと
圧抜きとは、その名の通り、皮膚にかかる圧力を解除してあげること。
皮膚には【身体の重さで圧迫される力】だけではなく、身体をずらしたときに生じる【皮膚が伸ばされたようにかかる力】や【ねじれるようにかかる力】があります。
この皮膚が寄れたり引っ張られたりする圧力は、体位変換をしただけでは解除するのに不十分なのです。
体位変換をして寝かせたあとに、少し身体を持ち上げることで、皮膚を元の位置に戻してあげることができます。
床ずれは同じ姿勢で長時間寝ていることが原因と考えられがちですが、実際には皮膚が長時間圧迫されることによる血行不良が原因。
そのため、圧抜きをすることで、同じ姿勢で長時間寝ていても床ずれのリスクを減らしてあげることができます。
大きな子は無理に一度で持ち上げようとせず、頭部・胸部・腰の順に一部ずつ解除してあげましょう。
底つきはマットの厚み不足!ひと工夫で買い替え不要
底つき感とは、薄い座布団などの上に座った時に感じる、床の硬い感触のことです。
適切な種類のマットを使っていても、犬の体重にマットの厚みが足りていないなどで薄すぎると、床ずれができてしまいます。
底つきは、マットの上に犬を寝かせた状態で、マットと床の下に手を入れて底つき感がなければマットの厚みは十分です。
肩や腰などの体重が集中しやすい箇所は必ずチェックしましょう。
底つき感が確認できても買い替える必要はありませんよ。
マットの下にウレタンマットや座布団を敷けば底つき感がなければ大丈夫です。
人間でも、薄いマットの上や硬いところでついつい、うたたねしてしまった時などは、起き始めに身体が痛くて動くのがしんどくなりますよね。
犬も同じで、身体を痛めるマットは、立ち上がりが億劫になり、より寝たきりが加速してしまいます。
適切なマットを快適にセッティングしてあげましょう。
マットの上はシンプルに1枚重ねる程度
介護マットはマットレスではありません。
人間用の布団の下に敷くマットレスとは違いますので、マットの上は防水シートやバスタオル1枚程度の薄敷きで十分です。
寝床をふかふかにしてあげようと毛布やクッションなどを上に重ねると介護マットの機能が発揮できません。
マットの上はシンプルにしましょう。
まとめ
- 床ずれは長時間の血行不良が原因のため、皮膚への圧迫を予防できれば、長時間同じ体勢でも眠ることができる
- 老犬は傷の治りが遅いため、床ずれはできないように予防することが大切である
- 床ずれを絶対に作らないということは不可能で、できてしまっても飼い主を責めたりせず、床ずれに対して適切な処置を行っていけばよい
- 介護グッズやマットを、状況に合わせて上手に利用することで、ペットと飼い主お互いの負担を減らすことができる
- 手足の関節の擦れにはサポーター、肩など体圧が集中する場所への床ずれ対策には介護マットがおすすめ
- 介護マットは大きく分けて3種類あり、完全に寝たきりか、床ずれはできているかなどの傾向によりおすすめするマットが異なる
- ジェルマットは床ずれを改善させる効果が期待でき、予防目的だけではなく、すでに床ずれがある老犬におすすめの、高品質マットである
- 床ずれは重みによる圧迫の他に、皮膚が伸ばされるような圧迫、ずれ・ねじれによる圧迫があり、体位変換後に持ち上げて圧力を解放することで皮膚への負担を減らせる
- マットの厚みが十分か、底つきがないかのチェックが重要
- 介護マットはマットレスではないので、上に重ね過ぎるとマットの効果が発揮できなくなる
毛が長い老犬では、床ずれを見つけにくく、突然ごっそり毛が抜けたと思ったらその下に床ずれができていたということも起こりがちです。
特にできやすいところは、しっかり毛をかき分けて早期発見、早期対処に努めていきましょう。
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